2026.05.12
複数地権者・相続未了の土地活用|パチンコ店跡地のドラッグストア誘致 成約事例【コスモス薬品丹波篠山店】

「地権者が複数いる」「相続が済んでいない」その土地、あきらめていませんか?
「所有者が複数に分かれて話が前に進まない」「相続登記が済まず名義が固まっていない」こうした土地でも、ドラッグストアの土地活用は有力な選択肢になり得ます。進めにくく見える土地ほど、用途の確認・許認可の段取り・関係者の取りまとめという“最初のつまずき”さえ越えれば、長期の安定収入につながるからです。
今回ご紹介するのは、兵庫県丹波篠山市のパチンコ店跡地が、ドラッグストアコスモス(コスモス薬品)丹波篠山店に生まれ変わった成約事例です。この土地には、土地活用でつまずきやすい論点が重なっていました。
- ・用途の確認が必要:出店の可否を判断するには、まず「その土地に何が建てられるか」を確かめる必要があった
- ・開発許可などの許認可:敷地が一定規模を超えるため、都市計画法29条の開発許可をはじめ通常必要な手続きを工程に織り込む必要があった
- ・地権者が複数・相続が未了:所有者が分かれており、うち一区画は相続登記が済んでいなかった(本事例でいちばんの論点)
こうした案件は地主が自ら活用先を探すとは限らず、事業者側から持ち込まれることも多く、用途の確認・許認可の段取り・複数地権者の取りまとめをどう進めるかで着地が変わります。本記事では、これらを一つずつどう解決したのかを解説します。
【事例】丹波篠山のパチンコ店跡地が「コスモス薬品丹波篠山店」になるまで
舞台は、兵庫県丹波篠山市の県道沿い、全体で約1,300坪の土地です。もともとはパチンコ店の跡地で、地域の生活エリアに位置しています。
この土地は、ひと続きに見えて所有者が分かれた複数の地権者の土地で構成され、さらにそのうちの一区画は、もとの所有者が亡くなって相続登記が済まず、相続人が複数いる状態でした。当事者だけでは前に進めにくい典型例です。
きっかけは、地主側の働きかけではありませんでした。複数の区画をまとめて一体で活用できないかという話が、まずパチンコ店敷地を持つ地権者のもとへ持ち込まれたことから動き出し、最終的に大手ドラッグストアチェーンのコスモス薬品の出店へつながりました。つまり地権者は、持ち込まれた話を評価し、条件を整える側だったのです。
私たちは、複数の地権者・テナント(コスモス薬品)・施工や売買にかかわる各社のあいだに立ち、条件整理・段取りから契約、開業までが円滑に進むよう、関係者間の連絡・調整を担う取りまとめ役を務めました。開発許可の申請や行政協議の実務は、設計・開発の専門会社が担当しました。案件化からおよそ2年をかけて、2025年5月31日、コスモス薬品丹波篠山店が開業しました。
ここからは、この案件で重なった3つの課題を順に見ていきます。
課題①:用途の確認「何が建てられるか」を早めに確定する
最初に確かめるべきは、その土地に“何なら”建てられるのかでした。用途地域による制限はありますが、出店の可否は用途を一つずつ確認すれば判断できるものでした。
そこで行政に確認したところ、対象の区画はいずれも、日用品を扱う店舗であれば建築可能な区分でした。ドラッグストアはこれにあたるため、用途を確認できた段階で、出店可能の見通しが早期に立ったのです。
「地方だから建てられない」と決めつける前に、まず用途を一つずつ確認すること。同じ土地でも業態によって可否は変わり、ここが跡地活用の第一歩になります。
課題②:許認可の段取り通常必要な手続きを早めに洗い出し、工程に織り込む
用途の確認ができても、すぐ着工できるわけではありません。本事例は敷地が一定規模を超えるため、都市計画法29条の開発許可の対象でした。これは規模が要件に達すれば通常かかる手続きで、特別なものではありません。ただし大規模小売店舗立地法(立地法)の説明会など必要な手続きが重なり、見落とすと工程が後ろにずれます。
そこで私たちは、必要な許認可を早い段階で洗い出し、工程に織り込むことを意識しました。
- ・開発許可の要否を初期に確認:何が建てられるか(課題①)と同時に、開発許可の要否を見極めました。
- ・条例の適用関係を整理:敷地規模の条件により、都市計画法29条の開発許可が適用される一方、市の条例で求められる周辺地権者の同意書は不要になるなど、適用される手続き・されない手続きを切り分けました。
- ・立地法の説明会・自治会との地元協議に参加:立地法にもとづく説明会や自治会との地元協議の場に参加し、必要な調整を進めました(開発にともなう住民向け説明会は、事業者・設計会社が主体で実施)。
- ・解体・現場の段取り:旧建物(パチンコ店)はアスベストの懸念がないことを確認したうえで更地化し、着工へつなげました。また開発区域の周辺に通学路があったため、子どもの安全に配慮した対策を関係者・近隣で協議し、計画に織り込みました。
手続きが必要な土地活用は、全体像を最初に描けるかで進み方が変わります。申請や行政協議の実務は設計・開発の専門会社が担いますが、どの許認可がいつ必要かを洗い出し、連絡・段取りを担う役割があることで遅延を抑えられます。
課題③:地権者が複数・相続が未了。全体を束ね、連名契約で前に進める
ここが今回いちばんお伝えしたい点です。地権者が複数に分かれた土地や相続登記が済んでいない土地は「権利関係が固まっていないから活用できない」と思われがちですが、本事例では次のように前に進みました。
- ・地権者ごとの希望を一つずつ整理:区画ごとに事情も希望も異なり、土地を貸して地代を得たい地権者もいれば、その区画を手放す地権者もいました。それぞれの希望(貸す/手放す)と条件を整理し、全体が同じ方向でまとまるよう調整しました。
- ・地元の不動産会社と二人三脚で地権者対応:この土地では、地元で地主側の窓口を担う不動産会社が、各地権者との接点になっていました。私たちはこの会社と密に連携し、各地権者への説明・意向確認・書面のやり取りを丁寧に進めました。地元に精通した窓口と外部の専門会社が二人三脚で動くことで、複数地権者・相続未了という難しい条件でも取りまとめが前に進みました。
- ・相続が未了でも、法定相続分にもとづく連名で契約:名義の相続登記が済んでいない区画でも、法定相続情報一覧図で相続人を確認したうえで、遺産分割の完了を待たずに、法定相続分にもとづく相続人の連名で予約契約を締結し、のちに公証役場での公正証書による正式な契約へ整える段取りを組みました。「相続が終わっていないから動けない」と思われがちですが、正しい手順を踏めば前に進められます。
権利関係が複雑な土地ほど、あいだに立って全体を束ねる役割が効きます。「所有者が複数だから」「相続が未了だから」とあきらめる前に、今のままでどこまで進められるかを確認する価値があります。
採用したスキーム:事業用定期借地を軸に、各地権者に合わせて組み合わせ
3つの課題を越えたうえで、地権者ごとに無理のない方式を組み合わせたのが本事例の特徴です。生活エリアに面した区画では、事業用定期借地が選ばれました。
事業用定期借地は、地主が土地を貸し、出店企業がその上に店舗を建てて事業を行う方式です。地権者の主なメリットは次の3点です。
- ・初期負担が小さい:建物はテナント(出店企業)が建てるため、地主が用意するのは引き渡せる状態にする造成程度で済みます。
- ・長期で安定した地代収入:事業用定期借地は長期契約が基本で、契約期間を通じて毎月安定した地代が見込めます。
- ・土地を手放さず、満了後は土地が戻る:所有権は地主のまま。定期借地は満了で終了し、最終的に土地が地主(やそのご家族)に戻ります。
一方で、区画によっては手放す選択をとった地権者もおり、借地と売却を組み合わせて全体を成立させました。「全部を貸す/売る」だけでなく、区画ごとに最適な方式を選べるのが、複数地権者の土地活用の柔軟さです。
ドラッグストアの土地活用|企画から開店までの流れ
跡地のドラッグストア土地活用は、思い立ってすぐ開店できるものではありません(本事例も約2年)。大まかな流れは次のとおり。
- 立地・規制の確認:商圏と、何が建てられるか(用途区域・開発許可の要否)を見極める
- 地権者の条件交渉・取りまとめ:複数地権者・相続未了の権利関係を整理し、貸す/手放すを決める
- スキーム選択:事業用定期借地・売却などを各地権者に合わせて組み合わせる
- 契約締結:事業用定期借地権設定(予約)契約・解約合意・公正証書などを組成する
- 開発許可・解体・造成・建築:都市計画法29条の開発許可を取得し、解体・更地化から着工へ
- 竣工・引渡し・開店:検査を経て引渡し、テナントによる開店準備(2025年5月開業)
まとめ:複数地権者・相続未了の壁を越えれば、跡地は「長期の安定収入」に変わる
パチンコ店跡地をはじめとする跡地のドラッグストアの土地活用は、一見ハードルが高く見える土地でも前に進められます。今回の事例が示すのは次の3点です。
- ・用途を確認すれば、出店の可否は早期に判断できる。まず「何が建てられるか」を確かめる
- ・開発許可など必要な手続きも、早めに洗い出して工程に織り込めば遅延を抑えられる
- ・地権者が複数・相続が未了の土地でも、全体を束ね連名契約で前に進められる(本事例の核心)
そして共通するのは、話が持ち込まれたときこそ、用途を確認し、許認可を段取りし、複数の当事者を束ねる取りまとめ役の有無で着地が変わるということです。「自分の土地はドラッグストアに向いているのか」「複数名義や相続でつまずいた土地でも活用できるのか」まずそれを知ることが最初の一歩です。まずはお気軽にご相談ください。

