2024.10.30
商業施設誘致に関わる法規制や許認可について -大店立地法-
今回は商業施設を誘致する際に関わってくる法規制や許認可の一つ「大店立地法」について、当社実績を交え解説していきたいと思います。
大店立地法(大規模小売店舗立地法)は、大規模な小売店舗の新設や拡張に伴う地域環境への影響を調整するための法律です。
2000年に施行され、主に店舗面積が1,000平方メートル以上の小売施設を対象としています。
この法律では、近隣住民の生活環境に配慮し、交通渋滞や騒音、廃棄物処理などに関する規制を設け、地域社会との調和を図ることが求められます。
店舗を新設または拡張する際には、事前に地方自治体に対して計画を提出し、関係する住民や事業者から意見を募る必要があります。
地域社会との調和とは
「地域社会との調和を図る」とは近隣住民への騒音や周辺の交通状況の調整などが求められています。
交通渋滞(警察との協議)
大規模店舗の新設により、多くの車両が店舗を利用が予想され、周辺道路で交通渋滞が発生する可能性があります。地域住民の生活や通勤・通学が不便になることが懸念されるため、駐車場への出入りや付近の交差点での混雑にならないよう調整が必要です。
計画当初案
最終案
当該物件は三方接道があり、当初は搬入車(貨物車)の出入口を左右に分け、東側に買い物客(一般車)の出入口を設ける計画でした。
しかし、警察との協議、住宅街への車の進入を極力減らすように、右折進入と右折退場を防止する指導をいただき、何度も配置換えを行いました。
最終的に出口を複数設けることと南側には住宅街、学校があるため交通事故リスクが高くなるとのことで一般・貨物車問わず、出口は東側左折のみに調整いたしました。
騒音(近隣の住環境配慮)
近隣の住環境に悪影響を与えることが考えられるため、営業活動や商品配送に伴うトラックの出入り、駐車場での車の出入り音、あるいは店舗内部や外部での商業アナウンスなど。
近隣の騒音に配慮したフェンスが設置されています。
※GoogleMapより
安全面の配慮
①幹線道路に対する施策
大店立地法では接道には6mの幅員が求められますが、神戸市では開発行為になると大型店舗は12m幅員が必要となります。
当該地は幅員のある幹線からの直接進入は、下り坂でスピードがでるため安全上不可とされ商業開発が不可能な状態でした
下り坂のため追突事故のリスクが懸念され、当局と協議の上、敷地内に進入路を整備する計画を策定しました。
また、安全性を確保するため、進入路手前数百メートルの地点から案内看板を設置するなどの対策を講じ、計画を実現に至らせました。
▲開発前の幹線道路
▲開発後の幹線道路
(敷地面積の一部を進入路として開発)
②後方道路に対する施策
後方の道路には側溝があり、車両の離合が困難な幅員の状態でした。
そこで側溝に蓋を設けることで、地域住民の安全性と利便性を両立させることができました。
立地法要件ではありませんが、進入道路工事などを伴った開発工事に際し、この土地を購入された不動産デベロッパー様が私道の通行地役権設定の名義変更をスムーズに行うために舗装改修を実施されました。
▲名義変更前
▲名義変更後
交通渋滞(地域住民への渋滞配慮)
アウトレットモールの集客力により、連休などには大渋滞が発生しました。
その影響で周辺の住宅街に迂回車両が入り込む事態が生じていたため、地域住民の皆様に対し、計画店舗の住宅街側の出入りについてご理解をいただくための説明会や協議を何度も実施しました。
こうした取り組みを経て、出店の実現に至りました。
当記時の事例は当社実例をもとに記載しております。テナント様が実施された全ての施策ではありません。
航空写真等はGoogleMapから転用しております。